あの世とこの世が交差する場所「青森の恐山」

恐山 地獄巡りphoto by www.aptinet.jp

地蔵堂本殿の奥に進むと恐山霊場の地獄巡りが始まります。ゴロゴロと白い石が転がり、そのところどころからは火山性ガスが噴き出しています。硫黄の匂いが充満するこの岩場には、無間地獄・修羅王地獄・重罪地獄などの地獄が点在しています。
ここはまさに慈覚大師が夢枕でお告げを受けた地獄そのものの風景が広がっています。

 
恐山 積み石photo by www.aptinet.jp

岩場を下ると、恐山の賽の河原には石が幾重にも積まれています。幼い子を亡くした人は「賽の河原」で石積みをし、地蔵菩薩に手ぬぐいや草履を手向けるそうです。
その所以は、親より先に亡くなった子供は親不幸の罪の報いで、賽の河原で石を積んで塔を造ろうとするたびに地獄の鬼に崩されるという責め苦に苛まれており、その幼な子を救う存在が地獄菩薩と信じられているからです。親が亡き子に代わって石を積んで子の追善供養をし、地蔵菩薩に供養するのだそうです。

 
恐山 血の池地獄photo by www.circam.jp

賽の河原の先には血の池地獄があります。ここは妊婦をなくした家族が寺から受けたお札を投げ、お札が浮いたままだと成仏していないということで、供養が必要になると言い伝えられている場所だそうです。現在、地の池地獄の水の色は赤色ではありませんが、元々は真っ赤だったそうです。

 
恐山 極楽浜 風車photo by asanao.exblog.jp

賽の河原、地の池地獄を抜けると景色はガラッと一転し、極楽のような風景が広がります。眼前に広がるコバルトブルーの宇曽利湖の白い砂浜を極楽浜と言い、砂浜に風車を立てて、お供え物をして拝んだ後に、極楽浄土があるとされる西の方角にある大尽山に向かって亡くなった方の名前を呼ぶ「魂呼び」をする人もいます。
魂呼びをすると、本当に極楽から死者の声がかえってくるような気がするほど、この世とはかけ離れた異空間のような雰囲気が漂っています。
ここで静かに手を合わせることで死者の冥福を祈ることが出来るのです。

 
恐山 イタコ口寄せphoto by www.aptinet.jp

夏の大祭や秋詣の頃になると、女性霊媒師であるイタコが山小屋にやってきて、口寄せを行います。イタコは死者の魂を我が身に宿し、そこの言葉を伝える能力のある者のことを言います。生まれつき盲目だったり幼いころに視力を失ってしまったりした女性が修行によって能力を備え、イタコとなり、神おろしの儀式を経た後に神の花嫁となりイタコと呼ばれる存在になるのだそうです。
イタコに亡くなった方の名前と命日を伝えると、経文を唱えて霊を下してくれるそうです。死んでしまった人の言葉をもう一度聞きたいという、残された者の願いを叶え、心を癒してくれる場所になっているのですね。

 

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