カザンラク・ローズ・フェスティバル Roze Festival in Kazanlak
日本ではヨーグルトと元琴欧洲関のふるさとでおなじみのブルガリア共和国。でも意外とそれ以上のことはあまり知られていない国かもしれません。ブルガリアは東ヨーロッパに位置しており、近隣の国はルーマニア、セルビア、マケドニア共和国、ギリシャ、トルコなど。国の東側は黒海に面しています。7つの文化遺産、2つの自然遺産を持つ、大変魅力的な国です。
でもこの国を一番有名にしているのは、この小さなピンク色のバラだということはご存知でしたか?その名はダマスクローズ。観賞用のバラではなく香りを楽しむためのバラです。世界中に2万種はあると言われるバラの中で、最も香りが良いとされることから「バラの女王」とも言われています。かのクレオパトラがその香りをたいそう好んだことでも有名です。
香水の原料にローズオイルは不可欠とのこと。モロッコやトルコ、中国、イタリアでもダマスクローズは栽培されていますが、ブルガリアのダマスクローズから取れるローズオイルはもっとも香りが良いとされ、世界中で販売されている有名ブランドの香水の8割近くに使用されているそうです。
集められたバラの花びらから、水蒸気蒸留法によってローズオイルは抽出されます。水蒸気蒸溜法とは、バラの花と水だけを煮詰めてオイルをつくる方法。その歴史は古く、今から1000年以上前にペルシャで発見されたと言われています。写真にあるような蒸留釜がかつては使用されていましたが、現在の蒸留施設では機械化が進み、温度等が厳密に管理できる釜が使用されています。
こうして出来上がったローズオイルは、香りや品質を厳しくチェックされた後、世界中に輸出されていきます。平均3000kgの花びらから1kgのローズオイルしか採れないことを考えると、その貴重さがわかります。
ブルガリアの中でも、ダマスクローズの生産地として名高いのが「バラの谷」。首都ソフィアから車で約3時間。ブルガリア中部、スタラ・ザゴラ州にあるこの谷では、300年以上にわたってバラが栽培されてきました。毎年バラの咲く5月下旬から6月になると谷全体がピンク色に染まり、バラの香りに包まれます。ダマスクローズが咲くのは1年でたったの20日間だけ。バラの谷の中央に位置する街カザンラクでは、この貴重な収穫の時期に合わせて「カザンラク・ローズ・フェスティバル」が毎年開催されています。