海外旅行で助ける日本の「大使館・総領事館」について

「大使館」とは?

まず「大使館」についてご説明します。

「大使館」とは、国交が成立している外国に自分の国の特命全権大使を駐在させて公務を執行させるための役所のことで、日本の法令用語では大使館、総領事館、政府代表部を総称して「在外公館」とよばれています。

「大使館」は、主に、派遣先の国の首都や主要都市に配置され、派遣元である国を代表して派遣先での外交活動の拠点となっています。

「大使館」の仕事とは?

「大使館」では、滞在先での自国民の保護・支援などの領事サービスや広報・文化交流活動、情報収集活動などの業務が行われています。

具体的には、渡航先で下記の6つのトラブル・アクシデントに見舞われた時に、対応してくれます。

1)所持金やパスポートなどの盗難にあったり、紛失した時
2)事件や事故にあったり、緊急入院した時
3)自然災害やテロなどの緊急事態が起きた時
4)行方不明になった時
5)逮捕拘禁さえた時
6)困りごとなどの相談

このような状況で、「大使館」でできることについて、下記にくわしくご説明します。

所持金やパスポートなどの盗難にあったり、紛失した時

「大使館」は、このような時に警察への届け出方法の案内や、家族・知人からの送金に関する予言、パスポートの新規発給または帰国のための渡航書を発給します。

ただし、「大使館」では、このような場合でも、下記の業務は取り扱うことができませんので、ご注意ください。

1)金銭の供与・立替、支払保証などの金銭的なこと
2)クレジットカードに関する手続をとること。
3)航空券の再発行に関する手続を代行すること。
4)遺失物を捜索すること。
5)警察への被害届の提出を代行すること。

事件や事故にあったり、緊急入院した時

「大使館」は、このような時に医療機関に関する情報を提供したり、弁護士や通訳に関する情報を提供してくれます。

また、家族との連絡を支援してくれたり、日本での治療を希望する場合には緊急移送について助言してくれたり、死亡事件・事故の場合には身元確認の手伝いや、死亡証明書の発給・日本への移送に関する助言などをしてくれます。

ただし、「大使館」では、このような場合でも、下記の業務は取り扱うことができませんので、ご注意ください。

1)医療費や移送費の負担、支払の保証や立替などの金銭的なこと
2)病院での通訳や交渉
3)犯罪の捜査や犯人の逮捕および取締り
4)相手側との賠償の交渉

自然災害やテロなどの緊急事態が起きた時

「大使館」は、このような時に渡航先に滞在している日本人の安否確認をしたり、日本人の被害者がいる場合には必要な支援を行い、インターネットでの情報提供や避難を支援してくれます。

ただし、「大使館」は、退避費用の負担はできませんので、現金の持ち合わせがない場合などには、在外公館に相談しましょう。

キーワードチェック:在外公館
在外公館とは、国が他国との外交・自国民の保護および、他国民への査証業務の提供のために他国内に設置した施設のことで、大使館、総領事館、政治代表部の総称のことです。

一般的な領事(本務領事)には、4つの階級があり、下記の通りです。

1)総領事
2)領事
3)副領事
4)領事代理

このほか、本務領事とは別に、現地の人に領事業務を委託し、派遣国の国籍を有さない「名誉領事」があります。

ちなみに、「総領事」が長である領事館が「総領事館」、領事が長であるものが「領事館」、「副領事」が長であるものが「副領事館」と呼ばれています。

主に「総領事館」「領事館」は、地勢的な便益のために設置されるもので、設置されるかどうかは派遣国の任意となっています。

なお、多くの「総領事館」は、戦争や災害などの不測の事態に備え、リスクを分散させて「大使館」の機能をスムーズに移転できるよう、首都と別の主要都市に設置されています。

参考までに、アメリカ合衆国には、2019年現在で15の日本総領事館が設置されています。

キーワードチェック:領事
領事とは、外国に在住して自国民を保護したり、自国の通商促進などを業務とする外交官の一種です。

1)管轄地域に滞在する自国民の安全確保に関連する業務
2)管轄地域に滞在する自国民の戸籍・国籍・旅券・各種証明・国政選挙等の手続に関する業務
3)管轄地域から自国を訪問しようとする外国人に対する査証発給手続に関する業務

なお、1)の安全確保の内容は様々で、主に下記の6つの業務があります。

A.大事故や災害時の自国民被害者の救護・安否確認
B.被害者の家族への連絡や来訪・帰国の手伝い
C.管轄地域の警察や病院から連絡があった場合の事情聴取や連絡・支援
D.テロ情報の収集
E.管轄地域の自国民への災害時の被災者対応
F.事前の対策や予防のための商工会議所や教育施設・病院・ボランティア団体との定期的な協議

「大使館」と「総領事館」「領事館」の違いとは?

「大使館」は、「外交の担い手」とされ、各国に1つしかありません。

主に、「大使館」は、相手国の首都に置かれ、自国と相手国の関係に関わる仕事を担当しています。

「大使館」の長は「特命全権大使(大使)」と呼ばれ、就任するには、日本では内閣の任命と天皇の認証が必要です。

一方、「総領事館」「領事館」は「大使館」より長い歴史を持ち、「大使館」の存在しない時代から、商売で異国の地で暮らす自国民を保護したり、その出生や結婚・死去に関連する手続のために官吏を派遣していました。

「総領事館」「領事館」は、受け入れ先の国との合意に基づいて相手国の主要都市に設置され、「大使館」で行われる外交活動以外の役割を担い、最も重要な仕事は自国民の保護と国民生活に必要な手続の代行です。

なお、「総領事館」「領事館」は、相手国との関係が悪くなると自国に引き上げる「大使館」とは異なり、その国に住む自国民のための機関という役割が大きいため、外交関係が断絶しても業務が続けられることが多いようです。

まとめ

いかがでしたか。

「大使館」では、主に外交活動が行われ、「総領事館」「領事館」では、外交活動以外の自国民の保護や国民生活に関連する諸手続が行われていることがわかりました。

海外旅行に行った時に、もし現地で何か困ったことがあれば、その地域の近くに設置されている「大使館」または「総領事館」「領事館」に相談して必要な手続を取るようにしましょう。

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