オランダは、17世紀にはヨーロッパの海外貿易国として発展し、日本とも交易関係にあり、鎖国の時でも、長崎の出島は日蘭貿易の場でした。
そしてまた、日本の蘭学形成に多大な影響を与え、西洋の医学や学問、文化も日本に伝えました。一般にネダーランド(Nederlands)がオランダの正式名称で、オランダ人やオランダ語のことは、ダッチ(Dutch)とヨーロッパでは呼ばれています。
オランダ人は手作りが好き
オランダには、長男が生後7か月の時から、主人の仕事で住むことになりました。
まもなく、オランダで次男を出産して、4人家族になり子育てを通じて、色んなオランダを見てきました。
長男が10才になるまでの約10年間、たくさんのオランダ人の方々に出会うことが出来ました。長男が幼稚園に入って、最初に習ったのが編み物でした。
朝、始まる時間になるまで、皆それぞれに編み物をして、先生を待っています。保護者が子供たちに教えながら、先生が来るまで付き添って、指導をしてくれるのです。
毎日10分か15分ぐらいしかできないので、進み具合は毎日ほんのすこしです。でも、その編み物が10センチ位になると、先生がボタンをつけて、子供の手首にそれを巻いてくれます。
そうすると、子供たちは手首に巻いた編み物を、自慢げに見せびらかせ達成感にひたります。4才から自分で作る楽しさ、満足感を教えてくれる幼稚園は素晴らしいと感じました。次は、リリアンを教えてもらえるので、子供たちは次の段階に進めた喜びも感じることができ、手作りが大好きになっていきます。
お母さん方は手芸、フラワーアレンジメント、洋裁、ペーパークラフトなど、多才です。お誕生日会などの招待状から手作りで、ゲームで使う物や洋服までも自分で揃えていました。お誕生日ケーキも、お母さんが子供の好きな車や電車の形に作ったりして、愛情たっぷりの手作りお誕生日会にします。
クリスマスのリースや家に飾るキャンドル、クリスマスツリーに飾るものまでも手作りです。クリスマス前になると地域で講習会があり、キャンドルリースやクリスマスカード、クリスマスフラワーアレンジメントなどを習いに行きました。今でもクリスマスになるとオランダで習ったクリスマスリースやフラワーアレンジメントで家を飾っています。
お父さん達も手作りは得意なようで、週末になるとDIYの音が聞こえていました。ちょっとした家の直しや改造は業者に頼んだりしないで自分でやります。男の子は中学校のときにDIYのノウハウを教えてもらったと家の隣のご主人が言っていました。
合理的社会で社会全体が無駄なく回っていく
子供が小さい時は成長が速くて、おもちゃ、子供用品、洋服など次から次へと買い替えて、家には使わなくなったものが増えていってしまいます。でも、オランダの合理的な社会のお陰で余り無駄な物を買うこともなく家の中もスッキリでした。シーズン毎に子供用品の売買の場を地域のコミュニティーセンターが提供してくれるのです。
売りたい人は前日に品物を持っていき開催日に売れた金額がもらえるシステムになっています。ほとんどの品物は新品同様なのに市価の3分の1か4分の1で売っていたので助かりました。初めて車のベビーシートを売りに出して現金収入を得た嬉しさは格別でした。当時は仕事をしていなかったこともあり少しウキウキしてしまう催しでした。それと、使えるものを無駄にしないオランダ人はとても合理的に生きてるんだと感心しました。
自治体が提供していた週1回の無料おもちゃレンタル場所も合理的だったように思います。子供が小さいと母子ともにリラックス出来るところが中々見つからないのですが、おもちゃレンタルは母子共にリラックスしながら楽しい時間が過ごせた思い出深い所です。小さい子供がいるお母さんが外に出てコミュニケーションが取れるように自治体が工夫をしているようです。
子供は2時間位たくさんのおもちゃや友達と遊べるし、お母さんも珈琲を飲みながらいろんな方とおしゃべりができます。その上、看護婦さんが何気なく子供の状態をみてくれるし、いろいろと相談にものってもらえます。帰るときには子供が気に入った三つのおもちゃを1週間レンタルすることができます。そして、来週それらを返しに来たらまた3つレンタルできるようになっています。
長男が初めて招待してもらった誕生会も合理的でした。お母さんがプレゼントのリストを作って招待した子供のお母さんにそれを渡し誕生日のプレゼントにしてもらいます。当日、主役のバースデーボーイがプレゼントを開けて、それらを身につけると彼は海賊の格好になり大喜びです。その子は自分の誕生日を海賊パーティーにしたいと言ってたので、お母さんが子供のためにアレンジをしたのです。
このように何事にも合理的なオランダ社会に欠かせないのが自転車です。ほとんどの道路には自転車専用車道があって、どこへでも自転車で行くことができます。だから、小さい子どもからお年寄りまで日常生活で自転車は欠かせないものになっています。毎日かなりの距離を走るので年配の方の足腰はとても強くて健康です。医療費削減にもつながっていると聞いたことがあり、これも合理的なオランダの一面かなと思いました。
学校行事が日本と違う点が多く面白い
4月1日のエイプリルフールの日は本当に「うっそー」と言いたくなるような行事でした。こんなことありえないよ、うそでしょ、と思えるものを作って持っていくのです。
1メートルもあるサッカーシューズを作って持って行きました。新聞紙を濡らしてボール紙に貼っていってから最後は壁紙を貼って仕上げます。結局、母親の私が何日も徹夜をして作り上げたのですが、当日は学校に持って行って写真を撮って終わりなのです。ジョークを楽しむ行事だったのですが、ちょっと真剣になりすぎて作ってしまったようでした。
5月の行事で面白いのは、全校生徒がいくつかのグループに分かれて学校の周りを歩いて、問題を解くのです。始まる前に問題用紙を渡されているので、それに沿って問題を解いていきます。父兄の方が家を開放して応援をしてくれていることで、子供たちは立ち寄ってジュースを飲んだり、果物を食べたりしながら楽しく問題を解いていけます。先生方もいろんな人にふん装をして町の人になりすましているので、これを当てるのも子供たちには楽しいようです。
夏休みになる前の日は皆が外に集まってミニ学芸会のようなものをします。前もって提出すれば子供たちのやりたいことを何でもしていいのです。歌を歌ったり、ダンスをしたり、お芝居をしたりと自由です。ちょっとしたお祭り気分で、顔のペイントの屋台やジュースやお菓子の屋台もあり、子供たちや父兄も楽しめるようになっています。これは先生方が子供や親の為に開いてくれているのです。この日で卒業をしていく子供たちもいるので、最後の思い出作りができるように楽しい行事になっています。
12月6日はセントニコラスの日になり、オランダでは昔からこの日にプレゼントがもらえるのです。学校にはそれよりも早くシンタークラウス(サンタクロースの語源の由来となった)とピートが子供たちに会いに来てくれます。子供たちにプレゼントは何が欲しいかなどをきいてくれたりするので、もう子供たちは嬉しくてしょうがなくなってしまいます。その日は、前もって持って行っていた自分の靴に小さなシナモンクッキーを入れてもらいます。本当のプレゼントは12月6日の朝、家で受け取れます。
冬休みになる前の夜にクリスマスディナーが学校で開かれます。この日は正装をして夜5時に学校の教室に行くと、キャンドルの光がテーブルを照らしています。席に着くと大きなお皿に料理が並んでいて、正装をした先生が一人一人のお皿にクリスマスの料理を盛ってくれます。
皆ナイフとフォークを使ってマナーよくディナーをいただきます。次の大好きなデザートになると少し緊張もほぐれて、お友達と話ながら笑顔が出てきます。全て終わると先生とハグをして小さい紳士と淑女たちは家路に向かいます。
まとめ
オランダという国で子育てができたことをとても嬉しく思うと同時にいい経験をさせていただきました。
今では一番良かった時代というか思い出深い時代になっているように感じます。チューリップと風車のイメージだけをもっていたオランダでしたが、人々が力づよく生きている姿を通してオランダ人が自分たちで作りあげた国であることを強く感じました。