日本の世界遺産特集(3)「富岡製糸場と絹産業遺跡群(群馬県) 」

「富岡製糸場と絹産業遺跡群」について

「富岡製糸場と絹産業遺跡群」とは、群馬県富岡市にあり、富岡製糸場、伊勢崎市、藤岡市、下仁田町の2市1町に点在する養蚕関連の史跡によって構成される文化遺産のことを言います。

具体的には、富岡市にある「富岡製糸場」、伊勢崎市にある「田島弥平旧宅」、藤岡市にある「高山社跡」、下仁田町にある「荒船風穴」を指します。

古くから、群馬県一帯は養蚕業が盛んでしたが、1870年に官栄の器械製糸工場を建てることになり、1872年に「富岡製糸場」が完成しました。

当時は、全国から「工女」を集め、一連の技術を習得してから出身地に戻って各地の器械製糸場で指導に当たり、その技術を広めることに大きく貢献しました。

「田島弥平旧宅」や「高山社跡」、「荒船風穴」は、「富岡製糸場」での養蚕業に深く関わった人物の旧宅や貯蔵施設です。

そんな「富岡製糸場と絹産業遺跡群」は、世界経済の貿易のあった19世紀後半~20世紀にかけての高品質な生糸の大量生産により、世界の絹産業を発展させ、絹の消費を大衆化させました。

記載物件名 富岡製糸場と絹産業遺産群
具体的な物件 富岡製糸場、田島弥平旧宅、高山社跡、荒船風穴
所在地 群馬県富岡市、伊勢崎市、藤岡市、甘楽郡下仁田町
推薦年月 平成25年1月
記載年月 平成26年6月
区分 文化遺産

「富岡製糸場と絹産業遺跡群」の特徴・おすすめスポット その1:東置繭所

「富岡製糸場と絹産業遺跡群」の「東置繭所」は、1872年(明治5年)に建築され、国宝として登録されています。

操業されていた当時は、1階は事務所や作業場として使用され、2階は乾燥させた繭を貯蔵する場所として使用されていました。

この「東置繭所」では、一度に32トンの繭を保管することができたそうです。

現在は、1階が富岡製糸場に関するガイダンス・スぺースや売店として公開され、製糸場の模型や歴史などが展示されています。

「富岡製糸場と絹産業遺跡群」の特徴・おすすめスポット その2:西置繭所

「富岡製糸場と絹産業遺跡群」の「西置繭所」は、「東置繭所」と同じく1872年(明治5年)に建築され、国宝として登録されています。

「西置繭所」は、「東置繭所」と同じように、2階は繭を都余剰させるために使われた倉庫で、大きさも「東置繭所」とほぼ同じです。

倉庫内は、自然乾燥ができるよう、風通しがよい構造になっています。

現在は、古来の方法で繭から糸を取り出す座繰りの実演や無料体験、明治初期に使われたフランス式繰糸器(復元)で糸を取り出す実演などをやっていますが、2020年までは保存修理工事中です。

「富岡製糸場と絹産業遺跡群」の特徴・おすすめスポット その3:糸繰所

「富岡製糸場と絹産業遺跡群」の「糸繰所」は、1872年(明治5年)に建築され、国宝として登録されています。

創業当初は、この糸繰所は繭から生糸を取る作業が行われた世界最大級の工場で、糸繰器が300釜置かれていました。

この工場は、トラス構造によって中央に柱がなく、工女が一度に作業することができました。

現在は、1966年(昭和41年)以降に設置されたニッサン製の自動繰糸機が保存されています。

キーワードチェック:トラス構造
トラス構造とは、主に体育館やドーム、橋などに利用され、木材や鋼鉄などの部材同士を三角形につなぎ合わせる構造形式のことです。

「富岡製糸場と絹産業遺跡群」の特徴・おすすめスポット その4:首長館

「富岡製糸場と絹産業遺跡群」の「首長館」は、1873年(明治6年)に建築されました。

この「首長館」は、富岡製糸場を建設する際に、その指導に当たったフランス人「ポール・ブリュナ」とその家族が暮らした住宅です。

建物の四方はベランダで囲まれ、窓によろい戸のあるコロニアル様式の広大な住居で、ブリュナ氏が契約満了によって帰国した後は、工女の宿舎や教養・娯楽の場として使用されました。

キーワードチェック:コロニアル様式
コロニアル様式とは、幕末・明治初期に外国人が建設した住宅のタイプのことで、典型的なものは、周囲にベランダをめぐらせた西洋館で、元々は、アジアの植民地での強い日光を避け、風通しをよくするために用いられた様式と言われています。

「富岡製糸場と絹産業遺跡群」の特徴・おすすめスポット その5:田島弥平旧宅

「富岡製糸場と絹産業遺跡群」の「田島弥平旧宅」は、群馬県南部や埼玉県の北部の蚕を飼っていた農家の家屋と同じ外観で、現在も住民がいるため、中には入れません。

一見、ふつうの農家の作りですが、明治初期の養蚕業で主導的な役割を担っていた「田島弥平」が優良な蚕種を作るための「清涼育」を完成させたに関連する建築物であり、近代養蚕農家の原型であることから世界遺産に登録されました。

当時の資料や養蚕道具などが展示されている家の反対側にある「桑場」と呼ばれる倉庫を見学すると、この住宅の重要性が理解できることでしょう。

「富岡製糸場と絹産業遺跡群」の特徴・おすすめスポット その6:高山社跡

「富岡製糸場と絹産業遺跡群」の「高山社跡」は、「養蚕改良高山社」の創設者「高山 長五郎」氏の生家で、養蚕法の1つである「清音育」を研究し、社員に指導を行った場所として世界遺産に登録されています。

「高山 長五郎」氏は、1873年(明治6年)に「養蚕改良高山組」を組織し、この住居で養蚕法の改良や組合員の指導にあたり、1884年(明治17年)には「養蚕改良高山社」と組織変更し、初代社長に就任しました。

その後は、指導を請う声が増えたため、1887年(明治20年)に事務所と伝習所は移転し、この自宅を高山分教場として後進の指導を継続したそうです。

現在は、蚕室(養蚕用の家屋)と付属屋が残っており、周囲に蚕室の痕跡があるため、建物と敷地全体が国指定の史跡および世界遺産の構成資産となっています。

なお、「高山社跡」には解説員がいますので、見学の際には気軽に声をかけてみてください。

「富岡製糸場と絹産業遺跡群」の特徴・おすすめスポット その7:荒船風穴

「富岡製糸場と絹産業遺跡群」の「荒船風穴」は、庭屋静太郎・千壽親子によって作られ、1905年(明治38年)から1914年(大正3年)にかけて当時の最大規模の蚕種貯蔵施設として機能し、国指定の史跡および世界遺産の構成資産となりました。

この「荒船風穴」は、1905年、1908年、1913年に完成した3つの風穴で構成されています。

岩から出る風がとても涼しいので、夏に訪れるのもよいでしょう。

なお、「荒船風穴」にもガイドさんがいますので、見学の際には気軽に声をかけて解説を聞いてみましょう。

観光課や公式サイトからの情報まとめ (動画など)

富岡製糸場と絹産業遺跡群 公式サイト
https://worldheritage.pref.gunma.jp/ja/tkn/

ググッとぐんま
https://gunma-dc.net/sekaiisan

「富岡製糸場」へのアクセス方法

富岡製糸場
住所:群馬県富岡市富岡1-1

「富岡製糸場」へのアクセスは、下記の通りです。

電車でのアクセス

1)東京から富岡市まで
東京駅(上越・北陸新幹線)~高崎駅(乗換 上信電鉄)~上州富岡駅(約95分)

2)新潟から富岡市まで
新潟駅(上越新幹線)~高崎駅(乗換 上信電鉄)~上州富岡駅(約115分)

3)金沢から富岡市まで
金沢駅(北陸新幹線)~高崎駅(乗換 上信電鉄)~上州富岡駅(約170分)

上記は、乗り換え等の時間は考慮されていませんので、ご注意ください。

なお、「富岡製糸場」への最寄り空港は、羽田空港です。

車でのアクセス

信越自動車道富岡IC下車、各駐車場まで約10分(3㎞)、駐車場より徒歩約10分(500m)

なお、富岡製糸場は車両の乗り入れができませんので、車の場合には、近隣の市営駐車場等(無料・有料)をご利用下さい。

「田島弥平旧宅」へのアクセス方法

電車でのアクセス

東京方面からは、東京駅からJR高崎線をご利用ください。

1)JR高崎線「岡部駅」からタクシーで約10分または「本庄駅」からタクシーで約15分
2)JR両毛線「伊勢崎駅」からタクシーで約35分
3)東武伊勢崎線「境町駅」からタクシーで約20分

なお、最寄り空港は、羽田空港です。

車でのアクセス

1)関越自動車道本庄児玉ICから車で約20分
2)北関東自動車道伊勢崎ICから車で約30分

なお、駐車場は、「島村蚕のふるさと公園」駐車場をご利用ください。

「高山社跡」へのアクセス方法

電車でのアクセス

東京方面からは、JR高崎線をご利用ください。

1)JR八高線 群馬藤岡駅下車、タクシーで約20分、または、市内循環バス「めぐるん」で約35分、「高山社跡」バス停下車
2)JR高崎線 新町駅下車、・タクシーで約30分、または、多野藤岡広域路線バス「かんながわ号」で約35分、「高山社跡」バス停下車

なお、最寄り空港は、羽田空港です。

車でのアクセス

上信越自動車道藤岡ICから高山社跡駐車場まで約20分です。

なお、「高山社跡」前の駐車場は、駐車可能台数に限りがあり、一部を除き、体の不自由な方専用のため、約350m手前に市営駐車場(高山社跡駐車場)、約250m手前(三名川対岸)の駐車場をご利用ください。

また、駐車場から「高山社跡」までの道路は、道幅が狭く危険ですので、三名川沿いの遊歩道をご利用ください。

「荒船風穴」へのアクセス方法

電車でのアクセス

東京駅(上越・長野新幹線)~高崎駅(上信電鉄)~下仁田駅(約120分)です。

最寄り空港は、羽田空港です。

車でのアクセス

1)東京:練馬IC(関越自動車道)~藤岡JCT(上信越自動車道)~下仁田IC(約80分)
2)名古屋:名古屋IC(東名高速道路)~小牧JCT(中央自動車道)~岡谷JCT(長野自動車道)~更埴JCT(上信越自動車道)~佐久IC(約4時間10分)
3)大阪:豊中IC(名神高速道路)~小牧JCT(中央自動車道)~岡谷JCT(長野自動車道)~更埴JCT(上信越自動車道)~佐久IC(約6時間20分)
4)金沢:金沢東IC(北陸自動車道)~上越JCT(上信越自動車道)~下仁田IC(約23時間40分)

まとめ

いかがでしたか。

「富岡製糸場と絹産業遺跡群」は、19世紀後半から20世紀の明治から大正時代にかけて、世界の絹産業の発展や絹消費の大衆化に大きく貢献しました。

決して派手な施設ではありませんが、実際に訪れると当時の養蚕業に対する開拓精神や養蚕業を主導した人達の熱い思いが伝わってくると思います。

世界遺産にも登録された「富岡製糸場と絹産業遺跡群」をまだ訪れたことがない方は、ぜひ一度、足を運んでみてはいかがでしょうか。

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