photo by ikyu.com
もはや説明の必要も無い日本3大名湯の一つ、草津温泉は、その歴史、知名度、訪問者数共に日本最大級の温泉地です。
その中心地といえる湯畑から、日本ロマンチック街道の一部となっている国道292号線を白根山方面へ徒歩で15分ほど、温泉地の喧噪がすっかり遠くなったところで「つつじ亭」のサインボードが現れます。
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公道から見えるその姿は、とてもこじんまりしていますが、実は5000坪の敷地を持つ広大なお宿です。見えていたのは施設の一部で、一歩踏み入ってエントランスに至ると、その立派な木組みの玄関庇が奥に広がる宿の全貌を予感させます。
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館内は豪農の民家を思わせる真壁造り、玄関は畳敷きで床の間付きの広間です。漆喰壁などがどこか懐かしさを漂わせています。そこここに季節のお花が生けられており、ゲストへの細やかな心遣いを感じさせます。
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ラウンジのゆったりしたソファに座ればよく整ったお庭が、視線を遮る物の無いビューウィンドウから眺められます。
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敷地は5000坪ですが、宿の施設として使われているのは2000坪ほどだそうです。残りは自然の草木を残し森の中に抱かれるような趣になっています。
その2000坪にわずか10室という贅沢な構成は、大小の宿がひしめく草津では希少と言えるでしょう。
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宿は4つのエリアに分かれています。2階建ての建物に6室を備える「右近の棟」、4室の離れが渡り廊下で結ばれている「左近の棟」、そしてレセプションの本館と料亭「花回廊」などです。
ガラス窓を多用し見通しの良い回廊で結ばれたその造りは寝殿造りを思わせます。
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今回は10室の中から左近の「囲炉裏の間」を選びました。本館から渡り廊下を渡って敷地最深部に佇むこのお部屋は、囲炉裏付きダイニング、お座敷、和室、サンルーム、専用露天風呂を備えます。
お座敷と和室は囲炉裏付きダイニングを挟んで配置されており、大家族での宿泊でも十分すぎる間取りです。ホスピタリティが行き届いた別荘に泊まる様なラグジュアリーな体験が楽しめます。
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専用露天風呂は森に向かった窓を解放でき、穏やかな自然を愛でながら入浴出来ます。檜の湯船は草津中心部の湯畑から引かれた源泉が掛け流しで満たされています。酸性が強めなお湯ですので、専用だからといって長湯には気をつけましょう。
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大浴場「うららの湯」は男女ほぼ同じレイアウトで用意されています。内湯と露天風呂、サウナが用意され、お湯は万代鉱原泉から引かれています。湯質はかなり強い酸性との事で少しピリッとします。
一つの宿で二つの源泉が楽しめる宿は草津にもいくつかありますが、これほど施設が整った宿で楽しめるのは驚きです。
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右近の奥に設けられた貸切露天風呂「玉の湯」は、右近の宿泊ゲスト専用です。森に突きだした様に緑に囲まれ、180度の視野が開けその開放感が素晴らしく、この湯船の為に右近のお部屋を選ぶゲストもいるそうです。
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夕食は、右近は料亭「花回廊」の緋毛氈が美しい個室で、左近はお部屋で頂けます。この宿は「料理旅館」を標榜しており、厳選された食材を、料亭の技と美しい盛り付けで目と舌を楽しませてくれます。
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例えば春の八寸は、漆の盆に蕾が芽吹いたばかりの海棠の小枝があしらわれ、稚鮎や筍などで季節を演出してくれます。前回は山菜鍋が印象的でしたが、今回はお椀に誂えた春野菜の寄せ真丈が五臓六腑に染み渡りました。後半の主役、山葵でシンプルに頂く上州牛の焼きものも忘れがたいお味でした。
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夕食後は是非、談話室での一時をおすすめします。八角形で腰窓のこの空間の中央にはモダンな暖炉が設けられ、これを囲むように一人がけのソファが並べられています。
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カウンターに用意された紅茶を片手に、宿自慢のスピーカーから流れる音楽を聞きながらソファに身を沈めれば、充実した1日をさらなる高みに昇華してくれます。
朝食も夕食同様の場所で頂きます。バランス良く選ばれた充実の朝食は、この宿にまた来たいと思わせる最後の一押しになるでしょう。
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湯治場としての草津は、その優れた泉質と湯量が来訪者の最大の目的と言えますが、その分ホスピタリティや食事が霞んでしまう事がままあります。しかし「つつじ亭」は贅沢な敷地に2種類の源泉を引き込んだ上に、上質な食と宿泊体験を提供してくれます。
お別れの際に頂いた作りたてのおまんじゅうの、僅かに残る温もりの様に、宿を後にしたあとも体の芯が暖まっています。湯・食・ホスピタリティ、そのハーモニーがゲストを包んでくれているからでしょう。
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<宿の基本情報>
つつじ亭(群馬県/草津) [全10室]
所在地:〒377-1700 群馬県吾妻郡草津町639-1
アクセス:草津温泉バスターミナルより無料送迎あり(要連絡)
参考料金:1泊2名 夕朝食付 65,100円~ ※2016/10 時点
記事提供・協力:一休.com